アンティーク家具の店イチユウ

素材:家具用の材木

マホガニー
桐材と堅木
木材だけで年代判定
ベニヤ
バンディング
Inrays 象眼細工
Facks

■マホガニー

家具材には色々あるが、英国の家具についてランク付けしてみると、パイン(松)を1とすると、オーク(ナラ)は2、ウォールナット、ローズなどが4で、マホガニーは8の価値観で評価される。その上にサテンウッドだが、これは突板(つきいた)として使われる。

ちなみに突板とは木材を薄く削いだもので、別の木材に貼り合わせて使う。その木目の美しさを生かすのだが、ここでも板目、柾目を組み合わせて貼るなど、さらに工夫を凝らすこともある。このような「杢合せ(もくあわせ)」がほどこされていれば当然その価値は高い。
また日本製家具にも突板を使ったものがあるが、厚みが違う。日本製の多くは 0.1mm 以下のことが多いが、英国では 1mm 以上が普通だ。

さて、なぜマホガニーの価値は高いのか。理由としてまず挙げられるのは、その量の少なさである。
もともとマホガニーは英国では採れない。かつて、大航海時代から植民地を保有していたころは、カリブ海、アフリカなどから運び、加工していたのだ。今の英国に植民地はなく、ワシントン条約という枷もある。
松などはどこでも育つし、成長も早い。北欧でも採れるから、そちらのモダンファニチャは松が使われる。量も多いから安くなる。

しかし、店主はマホガニーのもっとも魅力ある特徴はその色にあると考えている。
家具が作られ、100年使われる。その 100年はマホガニー材に色の変化をもたらす。実際に使い込まれて色が変わる。積み重ねた年月は、あるいはシミのようになり、あるいはムラになる。これがマホガニーの味わいなのだ。

 マホガニーは100年経って良い色になるのである。

 

■桐材と堅木

日本は古来より着物の文化であり、着物を納める道具には桐材が最も適していた。
やわらかい材料でありながら燃えにくく、湿気を吸い取り中の衣類を守ってくれるのである。火災のとき、外側は真っ黒に焦げても内側は何ともなかったなど、よく聞く話である。また、伸縮が少ないため、引出しは「仕込み」ができる。前板がきっちり納まるように作ることができるのだ。内部の隙間も少なく、引出しを出し入れすると、空気の動きで上下の別の引出しが出し入れされてしまう。ヒューと息をしているような音もする。桐材は精度の高い造りが可能なのである。

桐材にはあたりまえの「仕込み」であるが、ナラ材などの堅木ではそうはいかない。
桐材も堅木も何年もかけて天日で干し、雨に打たせて灰汁を抜き、狂いの無いようにしてから使用するのであるが、それでも木は生きていて伸び縮みがある。その幅が、ナラ材は桐材よりもずっと大きいのだ。季節により、1メートルに対し4〜5ミリも変化する(幅方向)。
ナラ材で引出しを作るのであれば、この伸縮を考慮して少しゆるめに作らなくてはならない。堅木の引き出しが多少ガタガタしても、それはムクの堅木の証明なのである。

さて、少し昔の話になる。着衣が着物だったころだ。
桐箪笥は入梅時には湿気を吸い、引き出しが固くなり開かない。
それでいいのだ。
絹は湿気で傷みやすい。それに着ていると「暑い」。引出しが開かないような季節は着物を着ない方が良い。箪笥も開かなくていいのである。梅雨が明け、引出しが開くようになったら、虫干しして着物のシーズンとなる。桐箪笥が開かない間は木綿の浴衣がぴったりなのだ。桐箪笥は生活と密着していたのである。

 

■木材だけで年代判定

「アンティーク」とは100年以上前に製造されたものをいう。1900年以降に作られたものはまだ「セカンドハンズ」でしかない。また「リプロダクション」というものもある。
アンティークの雰囲気を真似、新しく作られたものである。現代の素材、製法で作られ、仕上げは100年前の家具を真似る。真似ただけ合って雰囲気はよくできていたりするものも少なくない。これらをいかに見分けたらよいのであろうか。

実は木材を見分けられれば、ある程度年代を切り分けることができるのだ。
マホガニーは現在ではワシントン条約の規制対象になっているほど減ってしまった。自由にマホガニーを使って家具を作ることができた時代は、ずばりアンティークの時代ということになる。1500年〜1800年代半ばまでは主に次の四種類の木材で家具が作られていた。

●マホガニー
  紅褐色の光沢、深い色あいを持つ。時を経るにつれ色艶はさらに深みを増す。軽く、硬く耐久性もある。

●サテンウッド
  明るい黄金色でまっすぐの木目。つややかな光沢が美しい。突板としての用途が多く、ムク材は少ない。斑入りのものもある。

●ウォールナット
  淡い茶色ではっきりした木目を持ち、磨くと特有の光沢を放つ。

●オーク
  落ち着いた色あいで、硬く強い。

この4種類以外の木材で製作されている家具は「アンティークではない」と疑ってかかっても、おおむね間違いない。信頼のできる実物で木材の特徴をよく見ておこう。材質の判定はアンティークの見極めの大事な要素なのである。

 ★ マホガニー、サテンウッド、ウォールナット、オーク以外の木材のアンティークはありえない。

 

■ベニヤ

初期の家具は板の厚みを求められたのを受け、ムク材で作られていた。やがて家具作りの技術やスタイル(流行の型)の発達に伴い少しづつベニヤを使用した家具が出始めた。
当時のベニヤは豪華な模様が出るように木材を薄切りして、ムク板の表面に張り、高級感を醸し出すものであった。現在も英国で製造されている超高級家具は同様の方法である。

アンティーク家具に張られているベニヤはハンドカットで比較的厚みがあった(0.03〜0.06inch = 1〜2mm)。
ハンドカットゆえ表面はでこぼこしていた。これは製造年代を推測するチェックポイントでもある。現在は機械加工で画一的、つまり表面が滑らかかつ非常に薄い(0.03〜0.05mm)。両者はまったく違うものだし味わいは雲泥の差となる。
いかなるベニヤも厚みを調べるならば家具の縁(端)を見ればよい。例えばカップボードのドアを例に挙げれば、ドアの枠端までベニヤをまいて飾り付けてある。チェストであれば裏板を見ればベニヤは天板まで張ってある。

ベニヤの特徴は経済的に効率が良いばかりではない。丸太に沿って対角線の方向にカットすると見事な高級感あふれる模様が生まれ、さらにそれを板張りにすると非常に珍しい柄となり独特の味を生み出す。
最も人気があり、欲求度の高いベニヤは「burrs」である。それは木の最も堅い節(こぶ)の部分だ。
そのほかサテンウッド(satinwood)、キングウッド(kingwood)、コロマンデル(coromandel)などもベニヤとして使われた。これらの木は量が極端に少なく、また木が細く短いのでムク材が取りにくいという事情もあった。必然的にこれらを使った家具は非常に高価なものであった。
他の木材、マホガニーやウォールナットなどはムク材でもベニヤでも半々くらいに使われた。オーク、エルム、チェストナッツ、チェリーなどは主にムク材で使われ、これらは総じて田舎風の作りをされていたのである。

 

■バンディング

ベニヤが最初に使われたのは17世紀後期においてである。そして一般的に普及し始めたのは18世紀以降となる。
ベニヤの特徴は価格面において優れていることだ。装飾的に優れた杢目を持つ面をムク材よりはるかに多く作ることが出来る。さらに木の本来の杢目に人間の工夫を凝らすことも出来るのだ。

18世紀初頭の多くの作品には「quarter-veneerd tops」が見られる。
4つの柄合わせされたベニヤがトップ(引出の前板)に張られている。デザインは左右、または上下対称が基本だ。
この手法は装飾としてはもちろん、実用性にも優れていた。18世紀中期ころまではウォールナット材ベニヤは大物家具に張るだけの面積のあるものがなかったのだ。

バンド付けには次の三つの手法があるが、どれも、引出の前面、キャビネットの扉、テーブル天板の縁周りなどに施され「ベニヤの杢目の美しさ」を補完している。

 1.Cross banding
    短いパーツが周方向と直角に貼られる。高級家具用。
    貼付けの境目が隆起したり隙間が出来たりする傾向があり、
    どこか修理されていることも多い。

 2.Straight banding
    細長い帯状のベニヤで四方を囲む。
    シンプルな手法で隆起などの心配が少ない。

 3.Feather or herringborn banding
    18世紀初期に多い。二つの細い帯を張り、その周りに
    Cross banding を施す。これにより、鳥の羽模様に見える。
    18世紀初頭のビューローやケース家具で人気があった。

 

■ Inrays 象眼細工

参照写真はこちら→http://www2.wbs.ne.jp/~ichiyu/kaisetu/inlays.htm

象眼細工のなかでもベニヤ張り家具の表面に違う杢をはめ込む手法は一般的に色の対比を強調し、模様を描いている。この中から代表的な手法を見てみよう。

●Line inlay
糸状細工として知られる技法。表面に1種類もしくは2〜3種の杢を細い線状にはめ込んだものである。通常は角(端)部分もしくはそれより少し中に入った部分に施したものが多い。チッペンデール期の終期頃より非常に人気の出た技法。

 

●Marquetry
この技法は Line inlay よりもさらに精巧な技法であり、ヨーロッパ大陸では、17、18世紀に大人気となった。通常、花柄が多いが、鳥、壷、貝殻、渦巻型などさまざまなモチーフが使われた。この技法はどれをとっても価値が高く当然価格にも反映されている。

 

●Parquetry
この技法はデザインに特徴があり、多くは幾何学模様が描かれる。ベニヤの小片を組み合わせて作るのである。英国においては17世紀後期に人気が出たが、19世紀初期に小物家具などにも施されている。ヨーロッパ大陸においては長期に渡って使われ、こちらの方での人気が高かったようだ。

 

 

■ Fakes

贋作は新材で作られるものが多いので見分けるのは比較的容易といえる。それでもたまに古材を使って作られているものがある。これらの古材はおそらく壊れた古い家具から使える部分を利用しているのだろう。

こうなるとアンティークとの見分けが非常に困難な場合がある。
エキスパートでさえ手を焼くほどだ。
それでも贋作制作者は必ずと言っていいほど、どこか間違いを犯しているものだ。

特にベニヤの扱いに注目してみよう。

初期の頃のウォールナット家具のベニヤの合わせ目には樹液が染み出し、周囲よりも暗い色合いになっているものである。それは年月による汚れの美しさといえる。もちろん新しいベニヤにそんな美しさはない。

ダメージが偽物ということもある。破損箇所やひび割れは内側と外側に矛盾なく存在するのが普通だ。もし割れ目が内側にあり、外側のベニヤ仕上げされた表面が無傷なら、傷を隠すために手を加えられたものと判断できるだろう。

引き出しの中と外を見比べてみよう。取っ手の穴跡が裏表で一致していないなどが見受けられたならば、やはり外の表面のみをベニヤ張りされた疑いがあるだろう。

見えにくい部分を現代物の合板で済ませたりしていることも多い。
こんな手口は見れば一目瞭然。注意しよう。

  ★ベニヤには年月が現れる。

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