アンティーク家具の店イチユウ

素材:材木のパーツ

一枚板
象眼細工
彫刻装飾
組み立ての方法とその質
Feet

■一枚板

アンティーク家具 木の知識 板の裏表

ダイニングテーブルについて日本では一枚板をありがたがる傾向が感じられる。
今回は英国と比較しながら、一枚板とはぎ合わせ板ついて考えてみたい。

一枚板についてどんなものかということに説明は必要ないだろう。
「ムク材で板は厚ければ厚いほどいい。そのほうが丈夫に違いない‥‥」そういう考えはもっていないだろうか。
「はぎ合わせよりも一枚板のほうが良い材料だ。だって高いじゃないか‥‥」そう思い込んではいないだろうか。

一枚板は貴重だ。

テーブルを作るのに幅90センチの板が欲しいとすると、その板を取る木は直径が90センチでは足りない。
1メートル以上ないと切り出すことはできない。
厚みが欲しければなおのこと。さらに枚数を取ることができない。

当然、一枚板の家具は高価で数が少なくなる。
しかし木は生きている。
一枚板は反ったり、割れたりしやすいことを忘れてはならないだろう。

同じだけの木材があったとき、高いひとつのテーブルを作るのもひとつの方法だが、より多くのテーブルを作るという考え方もある。
はぎ合わせに限らず多くの技法が「より多く」の家具を作る目的で生み出されたのだ。幅の狭い木材でも並べてはぎ合わせれば十分な幅になる。単純な「いもはぎ」もあるが、「アリ組み」「やといざね」などの技法で強度を上げるのだ。

アンティーク家具 木の知識 いもはぎ

アンティーク家具 木の知識 やといざね

またこの貼り合わせを工夫することで反りを防ぐことができる。
木表、木裏を交互に組み、奇数枚ではぐのだ。
木は木表側に反り返る。交互に組むと反りの方向が逆で互いに反りを防ぐのだ。

アンティーク家具 木の知識 はぎあわせ

ちゃんと作られたはぎ合わせは丈夫で狂いのない良い材料なのである。
このような技法は日本もヨーロッパも同じだ。職人の知恵は洋の東西を問わず同じ技法を生み出した。
感心するばかりである。

英国ではキッチンとダイニングルームは別になっている。
しかし特別なことがない限りダイニングルームは使わない。
朝食や簡単な夕食はキッチンで済ませてしまう。

キッチンにはナラ、ニレ、パイン等のムク材の頑丈なテーブルが置かれる。
食事をするテーブルであると同時に調理の作業台でもあるからだ。
対してダイニングルームにはマホガニーの華奢なテーブルが置かれることが多い。こちらはエレガントなダイナーを楽しむからだ。

アンティーク家具を見るとき、それがどんな価値観をもって製作されたのか、そこに思いをはせなくては価値を見誤るのではないだろうか。

 ★ 木口を見て、木目から板の素性を読み取ろう。

 

■象眼細工

象嵌細工がほどこされた家具は多い。
一口に象嵌といっても実に多彩な表現が見て取れる。
インレイド(インレイ)、象嵌とは地の素材を彫って、その部分に他の材料をはめこんで模様を表す技法だが、
家具の場合もはめこむ素材は色々ある。

多く使われるのはやはり木材だ。
おそらく地が木材なので、相性がいいのと、扱い慣れていることから、多用されたのだろう。
模様を出す為には色の違う木や、木目の違う木、切り口の違う木などを埋め込むことになる。

「黒」を出すにはエボニー(黒檀)、白を出すにはブックツリーなどを使う。

木材以外の素材として、貝殻や動物の骨も使われた。
白を出すのに象牙が使われたし、廉価な家具には鯨の骨が使われたものもある。
今、鯨の骨を使うことは考えられない。

ましてや安いから使うことなどありえない。

このような時代の変化は当時の職人たちには思いもよらないことに違いない。彼らが今の時代にいたら、どんな材料を埋め込むのだろうか。
象嵌細工を見たら、今度はその素材にも注目してみて欲しい。

 

■彫刻装飾

家具に彫刻を施すということは、どの時代でも人気があったようだ。
その為か一度市場に出たものに、後から彫刻を施すようなこともしばしばなされたようである。
彫刻がオリジナルなのか後から彫られたものかを見分けることは非常に重要なのだが、こればかりは経験を重ねる以外に手はない。

17、18世紀の彫刻入り家具は本体のムク材を直接彫っていることが多い。
17世紀とそれ以前の彫刻はよく艶が出て表面がソフトな感じになるように仕上げられたが、18世紀になるとより安価に取引されるようになった為か表面が堅く割れやすい状態になっていることが増えたようだ。

ビクトリア女王時代からは高度な彫刻製品が出回るようになったがそれでも多くは粗雑でぎこちないデザインのものだった。
彫刻された部分の艶の出た角が欠けていたり、割れ目にワックスをすり込むことにより見た目を良くしていることが多く見受けられるのも17、18世紀の彫刻家具の特徴だろう。

本体を直接彫らずに彫刻した部品を貼り付ける、貼り付け彫刻はムク材の掘り込みよりも費用がかからない。
その為、19、20世紀の再生家具メーカーが良く利用した手法である。

■組み立ての方法とその質

ほぞ穴とほぞを接合するやり方は17世紀後期までは接着剤やネジを使用する方法よりもむしろ一般的だった。
組んだ板同士をがっちりと合わせるために、留め木が打ち込まれるのだが、この留め木は手作りで形も不揃い。
先を細くとがらせて使っていた。

手作りであり、先を細くして打ち込むため、頭部分がわずかに表面に浮き出ている。
その浮きを隠すために高度な磨き技術が開発されるようになっていった。

後に修繕される場合、留め木は機械作りのものになる。ダボの形はきっちりと円筒状になっている。
この留め木は打ち込まれた表面が初期の状態と逆になり、平らというよりむしろわずかにくぼんでいる。

これらに注意すれば修繕の時期を判断できるだろう。

クイーンアン時代(1702〜14年)になると組立方法はより洗練され上品な形となっていった。この時期は蟻組みと接着剤の使用が主流である。

18世紀後期まで家具の骨格をなす部材で見えないところに使用する木は手引きの鋸で切ったままを使用している。
そのため真っすぐな切り跡が残っている。
これが18世紀後期からは丸鋸が使われるようになり、切り跡もこの丸ノコの跡が残るようになっていった。

19世紀初期になって大量生産の時代が始まると、組み立ての質は大きく低下していく。
しかしどの時代の追従も許さないすばらしい作品の数々が生み出されたのも、「質が低下した」といわれる、このビクトリア時代だったこともれっきとした事実なのである。

 

■Feet

脚部のスタイルはそのアンティーク作品がいつ制作されたのかを調べるのにもっとも役立つガイドのひとつである。

しかし多くの脚部はそれらが使い古されて痛んできた時や、デザインのはやりすたりなどで取り替えられていることが多いのも事実である。
アンティーク作品を精密に調べ点検し、今現在着けられている足がオリジナルか否かを判定しなくてはならない。

脚の形だけに注目して時代の判定に役立てよう。

もっとも一般的なデザインは次の二つだ。

○ bun feet …丸形パンの形…17世紀後期から18世紀初頭
○ braket feet …棚を支える腕木の形…17世紀後期から18世紀後期

それぞれ実物を確認しておこう。

bun feet
アンティーク家具 |bun feet 丸形パンの形

braket feet
アンティーク家具 |braket feet 棚を支える腕木の形

 

「アンティークを見る眼」へ

イチユウ