アンティーク家具の店イチユウ

素材:木以外の材料

接着剤
釘,螺子
錠前
Lacquering と Japanning
ペインティング&ギルディング
Screws
Handles

■接着剤

最近は便利になったものだ。
一滴たらすと一瞬にして接着する化学物質が現れた。
祖父の時代とは大違いである。

家具職人の祖父は接着剤が必要になると自分で作っていた。
板の上にご飯粒をのせ、先を三角に削った棒で一生懸命に練り上げ、のりを作った。最初は少々水を混ぜるのであるが、途中つばを吐き、ころあいの固さに練り上げたものである。そののりを使って板をはいでいた。

こののりはすぐには乾かないので麻紐で縛り一晩ねかせて乾燥を待つのである。
私見だが、桐箪笥はのりの材料が米なので虫がつきやすいのではないかと考えている。

また、当時よりニカワ(膠)という接着剤もあった。こちらは動物の骨、皮などを石灰水に浸してから煮て取り出すゼラチンである。
和茶棚、針箱などはニカワを使っていた。なぜ桐箪笥にニカワを使わないのか。
祖父には聞きそびれてしまい、

「ニカワは常に火にかけてやわらかくしていないと使えなくて面倒だからか?」

「桐には合わないのか?」などと勝手に考えていた。

やがて父に聞いたところ、接着時間の関係だという。
ニカワはすぐに固まる。
接着面が狭ければニカワを塗って木を組み合わせる時間があるが、広い面を張る場合、ニカワは全面を塗る前に固まり始めてしまう。

ご飯ののりを使うしかなかったのであった。
のりまでも職人自らが作っていた時代はずいぶん遠くになってしまったようである。

■釘、螺子

桐箪笥には金属の釘は使わない。

卯木(うつぎ)を材料に箪笥職人が手作りする。
材料の卯木の板を釘として使う長さの長方形に切り出し、ノミで適当な幅に割り、さらに一本一本を削って先を尖らせる。
そして鉄鍋にごま油を引き、削った木を入れ熱を加えるのだ。こうすることで木の釘は丈夫になり、また滑りやすくなる。

この釘を打つ時は板が割れないようキリでキリ揉みし、糊をつけて打っていく。手間暇をかけ手作りするのだから丈夫なわけである。

さて、なぜ金属の釘を使わないのか。

桐材は柔らかい。
真っ直ぐな金属の釘では抜けやすいのだ。また、鉄釘はさびが出てしまうので、家具にはあまり使われなかったのである。
金属を使うならば真鍮の方がさびにくい。

英国のアンティーク家具ではネジ釘を使う。このネジの頭にあるネジ溝は今も昔もマイナス溝である。
最近の国産家具にはプラスネジの使用が増えている。

電動工具の普及が理由に違いない。
マイナスネジはネジ溝の方向にドライバーが滑りやすい。電動工具で簡単に作業するのにマイナスネジは不向きだ。
プラスネジならば滑りを気にすることなく簡単にねじ込んでいける。

大量生産にはプラスネジが向いている。

英国でいまだにマイナスネジを使うのは、修理が効くのが大きな理由だ。
プラスのネジ溝はつぶれると修理しにくいが、マイナスは溝自体がつぶれにくく、つぶれても溝を切り直すこともできる。
製作時点での締め込みも手作業で丁寧だから、逆に戻す場合も簡単なのである。

引出しがあれば引き抜いて見てみよう。
蝶番があればそのネジを見よう。
ネジだけ新しければ修理しているかもしれない。

アンティーク家具を見る時にその作られ方、修理の経歴などをネジから読み取ることもできるのである。

 ★ ネジはマイナス溝か。溝が崩れないようにていねいに打ってあるか注意。

 

■錠前

初期の家具(17世紀)に取り付けられていた錠前は通常ロートアイアン(錬鉄)で作られており、穴をあけた所を手作りの釘でおさえていた。
18世紀に入ると材料はスチール(鋼鉄)かプラス(真鍮)が使われるようになり、穴はスチール製のネジで固定されるようになった。
19世紀からはブラスが多用される。

錠前は、その家具独自に作ることがなんといっても望ましい。しかし、産業技術の機械化、進歩により大量の家具が作られるようになると大量の同一の錠前が作られることになった。錠前の取替え、すり替えもしばしば起こるようになったのである。

錠前の材料は各世代によって異なる。アンティークの錠前は緩んでいることが多い。
きれいに穴に埋まっていたりするものはオリジナルではないことがほとんどだろう。

 ●錬鉄:不純物を取り去り、炭素の含有量を極度に少なくした鉄。硬度は低
      いがさびにくく加工が容易。
  ●鋼鉄:可鍛鉄のひとつ。鍛えて含有する炭素の量を適量にし強化した鉄。
      硬いので刃物などにも使える。
  ●真鍮:銅と亜鉛の合金。加工しやすい。

 

■ Lacquering と Japanning

Lacquering(ラッカリング)も Japanning(ジャパニング)も「漆塗り」と訳されるが日本でいう「漆塗り」とは異なるものである。
この手法は16、17世紀のヨーロッパで大流行している。

Lacquering は木から採ったゴム樹液を板材に塗り重ね、その後色付けする。
もっとも一般的な色は黒と朱。緑や青は稀に見ることができるが非常に高価である。
表面に金粉の飾りを施されたものもある。

当時のフランスでは、Lacquering されたパネル材をアジアから輸入し家具に組み込んでいた。
イギリスでは17世紀後期になってはやり始めている。

Japannnig は Lacquering のヨーロッパ版といえる。
「gesso」という塗料を何回も塗り重ねて磨き上げ、さらに色付けなどして仕上げたものである。手法を開発したのはヨーロッパだが、そこでは流行らずにアメリカにおいて発展を見ることになる。

 

■ペインティング&ギルディング

オークの家具に色をつけたり、絵を描くという技法は、英国においては中世期に一般的だったがアメリカで普及したのは16〜17世紀と言われている。
ペイントされた家具は英国内で18世紀後期頃に再び人気が出始め、人々の目を楽しませた。このリバイバルした時期はとりわけネオクラシックスタイルの華やかなペイントワークが施されたサテンウッドの高級家具がその美しさと優雅さで脚光を浴びていた時期と重なる。

ギルディングという技法は金箔で飾り付けすることにより、豪華さと色のコントラストを強調させる。金箔で全面を覆ってしまうこともあるが、木の葉状の形にして貼り付けたり、絵を描くこともある。

製法はゲッソーと呼ぶ漆喰に似た素材を家具の表面に塗り、それを水やオイルで湿らせる。ゲッソーがベタつくところへ金箔を貼り付けるのだ。ハイライトを特に強調するときは磨きをかけることもある。

英国におけるギルディングは17世紀に最高級の価値ある家具にのみ使用されていたが、18世紀に入り金箔の量産と技術の向上により、施される家具も多くなっていった。
特に彫刻入りのコンソールテーブルやミラー、椅子などのフレンチテイストの家具に多く使われている。

ギルディングはヨーロッパ大陸でも大流行したのだが、アメリカでは19世紀までの家具にこの金箔加工された家具は見つかっていない。
このことも記憶にとどめておこう。

 ★ ギルディング加工はフレンチテイストのものが多い。

 

■Screws

初期の頃のネジは粗末な作りだ。

古いネジのネジ頭の溝は中心からずれていて、ネジ頭自体も形がいびつである。軸部分のネジ山の溝も不均等な間隔で、大体がネジ頭のすぐ下から全体に入れられている。

一方、現代のネジはきっちりできている。
ネジ頭はしっかりとした円形。
溝も中心を外しているものなどない。
軸部分の溝も均等につけられ、全体ではなく先端から中程までしかないものも多い。

そして何よりきっちりネジ穴に収まる。

完璧だ。

今のネジは工場での大量生産だ。
以前は丸い金属棒を削って溝を掘っていたのが、型の上で回転(圧力を掛けながら)させて溝を付けていくようになり、精度と効率が上がった。
より大量生産に向いた製法が開発されのだ。

ネジが交換されていればすぐに解る。残念ながらできの悪いネジの方がオリジナルだ。
きれいなものは疑ってかかろう。

 

■ Handles

脚と同様ハンドルは時代を判定する上で重要な要素となる。
しかしながら、後に付け替えられることも少なくないので唯一の基準とはならないだろう。

ハンドルはしばしばその時代々々のファッションで取り替えられたりもしている。たとえばクィーンアンの時代のものにチッペンデール様式のハンドルがついていたりするのだ。

17世紀までのハンドルはブラスやアイアンの割れ目入りの留め金で取り付けられた。
留め金が前板を突き抜け、内側で広げられて固定される。
1690年頃からハンドルはつか頭とネジで固定されるようになった。アンティークのつか頭は手製の鋳型を使ったブラス製。
ハンドルと軸が一体で、軸の断面は正方形になっている。
この軸の中程までを丸く削り、ネジ溝が刻んであるのだ。やがてつか頭は美しく細かいデザインが施されるようになっていく。

現代のつか頭は、頭部はブラス製、軸はスチール製となっていることが多い。
アンティークよりも軸の部分が長めで全体が円断面になっている。
アンティークブラスは現代のブラスよりも銅の含有量が少なく亜鉛が多い。きめが比較的粗くなるという特徴もある。

18世紀にハンドルをしっかり固定するために作られたナットは円形ではあるが形は不揃い。
もちろん現代のナットは規格化されたきれいな六角形だ。

ハンドルを引き抜いて軸の形状を確認するのは難しいだろうが、よく見れば時代の判定に役立つだろう。

 

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