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アンティークと暮らす:寝室

イギリス貴族の「寝室」について述べるのは難しい。
何故ならば、それはけっして現在の私達日本人が想像するような、単なるスリーピングルームでもなければベッドルームでもないからである。
敢えていうならばプリンシパル・ベッドチェンバー・スイートということになるだろうか。

貴族の寝室には次のものが含まれる。
ベッドルームは当然であるが、それに加えてドレッシングルーム(化粧室)が二つ、浴室、トイレ、ワードローブ、専用階段(寝室は二階以上にあるのが普通)、専用廊下である。
これらが一つになって、邸宅の「主寝室」と称される。

貴族の屋敷は、プライベートな空間を守るためにさまざまな工夫がなされた。主人側が居住する空間には、特殊な場合を除いては、召使いを近くに来させないようにしていたのである。召使いたちへの連絡も、その仲介をするのは召使い頭である執事やメイドたちの長であるハウスキーパーであり、主人や夫人が直接命令を下すことはなかった。その意味でプライバシーは守られていたとも考えられるが、屋敷内には、権威と格式のために、また実際的な必要性から、大勢の使用人が働いていた。だから、完全に使用人の目から逃れることは、事実上不可能であっただろう。

食事をするにしても、食堂に使用人が食事を運び、執事がじっと待機しているのである。たとえ家族だけの食事といえども、そこには、儀式性が存在し、衣服もディナー用に着替えねばならなかった。このような状況のもとでは、庶民感覚的な意味で確実なプライバシーを得るのはベッドチェンバー・スイートしかなかったのではないだろうか。

先に専用階段という語を用いたが、これはプライベート・ステアケースのことである。この階段はきわめて私的なものであり、なんらかの用事でこの階段を利用するときは、おそらくラフな格好で動くこともできたと考えられる。

寝室がスイートと呼ばれるのも、そこが単に眠るためのものではなかったからだ。ベッドルームに付属する化粧室は、当然着替え用の部屋であるが、それ以外の意味もあった。
それほど大きな化粧室を必要とはしない男性ですら比較的大きな空間を求めたのは、そこが書斎ないし物書き用の部屋として使用されたり、時には確実に「個」を守る「居間」の役割を果たすことも多かったせいである。

このような事実を念頭に入れると、現在の高級ホテルのスイート・ルームは、19世紀の貴族たちのベッドチェンバー・スイートのコピーであることが分かるはずである。とすれば、彼らの寝室を飾る調度品も容易に推察できるであろう。

個の空間ゆえにこの様なライティングテーブルも置かれる

アンティーク家具 マホガニーライティングテーブル

アンティーク家具 マホガニーライティングテーブルの引き出し

アンティーク家具 マホガニーライティングテーブル 一枚板の天板

一枚板のマホガニー天板。貴重です。1880年製

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